Mauritius

私は子供の頃より世界地理だけは学校の教師にも負けない自信があったが、
それが災いしたのが、今回のモーリシャス旅行だった。


ビザの関係で一度EUから出ないといけなく、どこに行こうかと探していたら、たまたま破格の
料金が出ていたのが、モーリシャス。早速、航空券を買いに行くと、楽園みたいなビーチの
写真が目に留まった。心が弾んだこともありその場で即決。

モーリシャスと英語で言われると場所が分かるが、私の滞在しているその国では、全く別の言い方
だったので、どの国か分からなかったものの、プライドが許さず人に聞けなかった。
本屋に行って調べても、結局は分からずじまい。
人に聞けば、すぐ分かったにもかかわらず。後から思えば本当にバカな私だった。

てっきり、モロッコの横か、地中海の東くらい程度に想像して、3泊の旅に設定した。

ところが、飛行機に乗り、「目的地までの距離」のでた地図を見て仰天。
なんと10時間以上で、アフリカ・マダガスカル島の東にあったのだ!

思わず、えーと声をあげたものの、今更降りるとは言えず、そのまま自然の流れに任せることにした。

早朝の到着後、まずは宿を確保してすぐさまビーチへと向かった。
青い空、透き通った水、真っ白な砂とまるで南国の楽園を絵に描いた風景だった。



海に入るととっても気持ちよく、童心に返ってひたすら楽しんでいたが、ある瞬間、ここはハネムーン
など、カップルで来るところで、一人では寂しく、虚しく感じた。

気分が盛り下がっていた頃、ちょうど目の前のビーチを沢山のみやげ物を抱えたお兄ちゃんが歩いて
いたのを発見。彼を捕まえ、ビールをご馳走するから少しお話しないと誘うと、すぐに承諾してくれた。

名前はジョン見た目はちょっと危なそうだったけれど、話しているとすごく感じの良い奴で、
ビールも手伝ってお互いにすぐ打ち解けた。しばらくすると彼の友達が、通り一緒に飲むことになり、
3人になったと思うのもつかの間、その友達、また友達と気が付くと男10人くらいがビーチの木陰に
車座になり、昼間から酒盛りを始めていた。

もちろんそんな時間から宴会に参加する人間って、刺青がすごかったり、強面だったりだけれど、
逆にこういった人種は根本的には性格が良いから、結構リラックスして話せる。

その頃になると、誰となく自然にビールががなくなったら、ワインなど必要な量を近くのキオスクに
買いに行くといったシステムが出来上がっていた。



さすがにひたすら飲みすぎるというのも疲れるので、午後の遅い時間にはジョンに食事に連れて行って
もらった。

モーリシャスは地理上アフリカに位置するが、ブラックアフリカとは異なり、雰囲気的にはインド・スリランカ
といった感じで、黒人もいるが、全体に褐色の肌をしている。また繊維産業でインドとの結びつきも強いし、
食生活でもインド料理の安いレストランで本場の美味しいカレーを食べれるのである。

もちろん私のランチはカレーで、チキンカレーを美味しくいただいた。

みんなとの約束もあり、食後再びそのビーチに戻ると宴会は続き、夕方になってもお開きになる気配は
なかった。

私の宿は安く上げるため、ビーチから離れた街中に取っていた為、18時過ぎが最終バスであり、
ようやく引き上げられると思ったのは甘く、強く引きとめられた。それでもバスがなくなり寝る場所が
なくなるというと、ジョンが一言。
「俺は最近はこのビーチにテントを張って寝泊りしているので、泊まっていきなよ。」
彼がそう言うとみんなが、そうだの連呼で、結局私は日が暮れても飲み続けることになった。

ちょうど夕食時間帯ということあり、ジョンの提案でバーベキューパーティを行うことになり、彼が
海の幸を獲りに潜りに行くと消えた。それにしても遅い、しかもなんか揉めているみたいだ。

帰ってきた彼に聞くとちょっとした縄張り争いがあったらしい。
結局大した物は持ち帰れなかったが、私のためにそこまでしてくれて申し訳なく感じたと同時に非常に
感謝をした。

海の幸こそ欠けたが、焚き火を囲んでのバーベキューはワイルドで、すごく盛り上がった。

みんな変なところで健康で、9時半過ぎにはお開きとなり、彼の大きなテントに彼の友達一人と私が、
転がり込んですぐに就寝となった。

翌朝7時ごろに私が目覚めると、彼らはすでに起きていて話をしていた。
本当に健康的だな。缶詰で簡単に朝食を済ませたわいのないことを話していると、昨日のメンバーが、
また徐々に集まり始めた。そして8時になり、キオスクが開くと誰かがワインを一本買ってきて、宴会
二日目の幕が切って落とされた。

それにしても本当によく飲む奴らだ。
結局私はその日の夕方まで彼らに付き合い飲んだが、雰囲気が楽しかったせいか、酔いの回りが穏やかだった。

三日目も誘われたが、これでは私は10時間以上もかけ、こんな遠くまで何をしに来ているのか分からないので、
首都のポートモルイスを目指しようやく観光客らしいことをした。こじんまりとした街であるが、なんと中華街
もあったから驚きだった。



街に戻ると私はちょっと顔を知られる存在になっていたようで、声をかけられては、酒屋に行ってそこで
ビールを買い飲むといったこともあったが、最終日にはさすがに疲れてきて、目立たないように歩いたし
したものだった。

結局、私は南国リゾートでビールをひたすら飲んでいただけであったが、たまにはこういった旅行も悪くないなと
帰りの飛行機の中で考えていると、隣に座ったヨーロッパからの観光客に、モーリシャスについて質問攻めに
された。なぜ同じ観光客にそんな突っ込んだことを聞くのだろうと思いつつも、三日間で仕入れた即席知識で
対処していたが、一つ答えられないことがあり、分からないというと、逆になぜ知らないのと、聞かれてしまった。

私が日本人観光客だから仕方ないだろうと言うと、それまでの表情が一転し、
「ごめんなさい。私はあなたがずっとモーリシャスの人と思っていました。」と一言。

ありや、ずっと外にいたから日焼けもあるけれど、彼らと過ごしている間に現地人の雰囲気までもらって来た
ようで、考えるとおかしくなった。

今度はステキな人と是非カクテルでも飲みながら、ビーチライフを満喫したいものだ。


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