Zimbabue (Botswana) 04
 

旅の休息を兼ねて、ボツワナにあるチョベ国立公園へと向かい、で船に乗ってのんびりと象眺めた後、
再びジンバブエに戻り、アフリカ最大の遺跡であるグレートジンバブエを目指した。

 

「グレートジンバブエへのバスはこれでいいの?」遺跡に行くバスを尋ねると、
バスに座っていた一人の乗客がそうだと答えてくれたことがきっかけで、
後日ジョン(名前は忘れたので仮名)の家に遊びに行くことになった。


悪路により文字通りバスにお尻を2時間揺られ、ようやく降りると、
その場所から動こうとせず、
ヒッチハイクをすると言い出し停まったのは、穀物を積んだ大型トラック。
座席のある前方に移動しようとすると、彼がこっちだと荷台を指差す。「ウソでしょう
!?

荷台には穀物らしい袋がただ積まれているだけ。トラックが走り出すと、怖いの一言。

幸いなことに中身がぎっしりと詰まっているため、簡単には動かないけれど、袋の山の山頂は
結構高く落ちたら確実に死にそうで、しっかりと袋にしがみ付いていたら疲れちゃった。
二人共顔が引きつり気味だったけど、ちょっぴりスタントマン気分で楽しかった。

トラックを降りる土壁で作られた伝統的な家が何軒か目に入り、ここが彼の住んでいる集落ね、
ようやく着いたなと安堵感を抱いて歩いていると、いつの間にかかなり遠ざかっていた。
時にはとうもろこし畑を掻き分け進み、いったいどこに行くのかしらと
30分くらい歩いた頃、
さすがに不安になり君の家ってどこにあるのと聞くと、遥か前方を指差した。
彼の視力はおそらく
2.0以上あって見えているかもしれないけれど、私には緑が広がっている
以外は分からない。すでに一人で引き返すことも出来ないし、彼を信じるほかなかった。

更に30分歩くと一軒の家を指差し、「ここに彼女が住んでいるんだ。寄ってみよう。」
とジョンは中に入っていった。
わずかな休憩の後、更に
30分以上歩くとようやく彼の家がポツンと存在していた。

遺跡で土壁の家に入ったが観光用で、それに比べると彼の家はかなり質素だった。
渇いた。近くにカフェなんてあるわけないので、ジュースを買いに行きたいと言うと、
また
30分ほど歩く羽目に。ジュースといっても選択枠がなく、濃い茶色のビンを彼の分を考え
数本抱えて帰り、いよいよ試飲をすると、目がグルグル
(_;)状態。


粉末を水で溶いたようなオレンジジュースで、薬のような苦味もする。当然冷えていないから、
ダブルパンチを喰らった。お店の雰囲気からすると、消費期限を
1年過ぎている可能性が
あったけれど、せっかく連れて行ってくれた彼のためにも、何とか一本を飲み干した。
何よりも贅沢をしているようだったから。

その事を痛感したのは、彼の家に着くと、プリントがほとんど剥げ落ち、道中汗だくになり
汚れがひどく、旅行中に捨てるつもりだった
Tシャツを弟のために欲しいと言われた事。

日本だと間違いなく廃棄になるものでも、穴開きの綻びた服を着ている子供達からすれば、
十分使える。質素な旅をしているつもりでも、まだまだ贅沢であった自分を実感させられてしまった。

彼と井戸に水汲みに出かけると、これまたひたすら歩かないとダメなのね。
もう、何をするにも体力勝負。

8時に宿を出たのに、もう日が西の空にある。ジョンにシャワーを浴びようと誘われ向かったのは、
家の中でも庭でもなく、少し歩いたところにある川だった。
川で石鹸とシャンプーを使ったのは初めての経験。
今では絶対に出来ない。更に彼にあげるための汚れた
Tシャツを洗う洗濯まで体験してしまった。
周囲を見渡すと我々の近くでは牛が水を飲んでいるのどかな光景が広がっていた。

汚染が心配だったけれど

夕食に、持っていた缶詰を差し出そうとしたが、ジョンは辞退し奥の部屋に消え、
何かを食べすぐに戻ってきた。その間わずか、
3分足らずだったであろうか。
どう考えても食事らしい食事をしているとは思えない。

これまでにも多くのお宅にお邪魔したが、一緒に食事をしなかったのは初めてで、食事風景や
内容を見られるのが嫌だったのかもしれない。

あれだけ忙しかった日中が、日が沈むと逆に何もすることがなくなる。
ベッドには蚊帳が付いていて、マラリア対策がきちんと取られていた。
外に出るにも蚊が飛んでいて危険だし、あるのは暗闇のみで、カフェなんてない。
それに、電気、水道、ガスなんて存在しないから、ロウソクの明かりでおしゃべりをすることが
唯一の楽しみとなった。

翌朝、夜明けとともに出発し、最終的に首都ハラレまで送ってくれ、お礼がしたく聞くと、
5
つ星ホテル内の高級レストランで食事をしたいという。席に案内され、何でも好きなものを
頼んでねと言ったものの、周りを見渡した彼は、すっかり緊張してしまい、普段も食べている
であろう国民食である「サザ」を注文した。


サザとはとうもろこしを挽いて粉にしたものをマッシュポテト状にしたもので、ビーフシチューと
ムリオ(西洋油菜)を添えて食べるのが一般的。


少し味見をさせてもらうと、美味しいけれど何かが違う。
3
日ほど前に民宿のおばちゃんが作った方が美味しい。
そう、お袋の味は高級レストランにはないんだ。
きっとジョンもそう思ったに違いない。

彼と別れた私が向かった先は、到着初日に滞在していた白人大農場主が自宅内に設けたペンション。
午後のお茶の時間には紅茶にお茶菓子といった振る舞いでなく、スコーンやサンドイッチまでが出てくる
本格的なアフタヌーンティ。夕食はイギリスの古きよき時代を思わせるダイニングルームでの、
セレブなマダムが作るイギリス料理。

全てが昨日と別世界、いえ、天と地ほどの格差があった。

ジンバブエ到着一日目にアパルトヘイトの名残を見て驚いていたのが、昨日ジョンの家を
訪れることで、それ以下の生活をしている事を知り、よりショックを受けてしまいました。

この実情を知らせようと友人にメールを送ると、面白いわね、それってフィクションと尋ねられる
返事が返ってきて、別のショックを受けてしまいました。
トラックの荷台にしがみ付いた事を含め全てが事実なのに、やはり普通に生活している人からは、
あまりにも現実とかけ離れているからでしょうか。


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