Burkina Faso 3

日中のワガにはこれといって気を引くようなものはないが、それが夜になると話は別である。
特に金曜日ということもありディスコやナイトクラブからはコンゴのリンガラ音楽が聞こえてくる。
もちろんブルキナ音楽もあるがリンガラの方がポピュラーのようだ。

ナナとその友達と私は彼らのお気に入りのナイトクラブに入った。
ココナツのトロピカル風の屋根があるダンスステージのみで原則的には野外ディスコといった感じだった。
時間が早かったせいもあり中はガランとして、私ら以外の客は、ナンパ目当てに女の子を待っている
数名の野郎ども、各テーブルを回り客を捕ろうとする娼婦のお姉ちゃんたちだけであった。

もう少し盛り上がってくるまでビールでも飲んでゆっくりしていると、ナナの友達が焼き魚でも
食べようじゃないかというので一緒について行くと、ナイトクラブの入り口でなんと少女が魚を
売っているじゃないか。  それにしてもなぜこんな場所でとますます私の頭は深い霧に
覆われていったが、彼女がナナの友達が選んだ魚を網の上に持って行ったときにその霧も晴れた。


なんと彼女は魚屋ではなく出張レストランのコックだったのだ。
炭火で焼かれた魚はきゅうりが上に乗っていて、塩だけの味付けだがこれが非常に美味しい。
さらにアツアツを手掴みで食べるので指先の皮膚にまで味が伝わってきて一層美味しさが増した。
この旅行中はその後ここまで美味しい魚にありつけることはなかった。


ナナが今一番おしゃれな飲み物を注文してくると席をたった。瓶を持って戻ってきた彼が、
私にそれを見せるとそこにはWhisky Blackと書かれていた。
説明よりも先に飲んでみると、それはウイスキーのコーラ割であった。

日本であれば別にどうってことのない飲み物でもこのブルキナファソにあるというだけでほーと
感心してしまう。味のほうはなかなかだったが、ちょっと甘すぎたので後で口直しに苦いギネス
アイルランドの黒ビールを飲んだ。とは言っても若者の間で最先端を行く飲み物を味わえただけでも、
この国で一番おしゃれな人間の仲間入り出来たことはなかなか体験できたものではない。

ギネスビールを飲んだと何気なしに書いたが、アフリカもしかも旧フランスの植民地であったこの国で、
私のお気に入りのそのビールがいとも簡単に飲めるとは思わなかったが、実際コカコーラの看板を
見かけるような感じでポピュラーであった。特に私の目を引いたのは本国のアイルランド産よりも
アルコール度数が高くイギリスのPale Aleやベルギーのトラピストレベルだ。

話が関係ない方面にそれてしまったのでナイトクラブのテーブルでの話に戻すと、
私らのテーブルがビール等の飲み物で埋まってしまったころ、ココナツの屋根で覆われた中央
のステージは、結構人な人で、皆リンガラ音楽に合わせて踊っていた。

アフリカの彼らは幼少のころから音楽と共に育ってきているせいか踊りは上手過ぎる。
そしてしばらく彼らの踊りを観察していて気づいたのだが、意外と踊り方がシンプルなのだった。
単に腕を前にゆらゆらと振ったり、また昔の狩のダンスをしているようにも見えた。

我々もおしゃべりに一段落を付け踊ってみた。楽しすぎる。
踊り始めてしばらくすると彼らが輪を作るように周りで踊り、一人が真ん中で踊る。
何時の間にか私も真ん中で踊っていた。もうそこには肌の色、言葉、習慣の違いなど存在せず、
ひとつの屋根の下でそれぞれが大家族の一員のようであった。

こうして私のブルキナ最初の夜は非常に中身が濃く過ぎていったのだが、
同時に初日、二日目とこんなに楽しくていいのだろうか。いきなりハイライトを迎えてしまったのか、
それならこれから先の旅はどんなものになるだろうかとうことが少し頭の中を横切った。




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