Ghana 7


宿に戻ったときはよく歩いたことで充実感があった。そうだ疲れているときはチョコレートだ。
早速先ほど買ったチョコレートを小さいほうを一通り試して見ることにした。
お味のほうはもちろんジョンが私にお勧めしたものと比べると味は落ちるが、以前に南米で食べた
凄くまずい物も食べているのでまあまあで、とりあえずは食べれるなということで合格ラインをクリア。
包装紙には英語とアラビア語で書かれているので輸出もされているのだろう。

旅を終えて家で食べたときはやはり一度解けていたので味が落ちていたから、新鮮なときに
食べておいてよかったとあとで思った。でないと本来はおいしくてもそのおいしさを知らずに想像で
ガーナチョコの評価をしなければならなかったのだから。それは彼らに申し訳ないし、自分でもそこまで
してチョコを手に入れたのにと悔やんだろうに。

ちょうど私がチョコの品評会を行っているときに部屋をノックする音が聞こえた。

ジョンだった。どうしたんだと聞くと、逆に私の今晩の予定を聞いてきた。
チョコで結構腹が膨れてきたしその辺でビールでも飲むくらいだと言うと、

「じゃあ、ディスコに行かないか。」

ワガドゥグではあれほど楽しんだのに、考えたらガーナに入ってからはまだ一度も言ってなかった
ことに気づいた私は、彼の案に承諾した。

ディスコに向かう夜道、彼は少し戸惑いながらこう言った。

「こうして時々ツーリストをディスコに連れて行ってあげると、この間のオーストラリア人なんか
チップだといって20ドルをくれたんだ。その前の誰々は15ドル…」

やはりこいつもツーリストに親切心を見せるのは金がほしかったのだと、想像はしなかったわけでもないが、
がっかりした。彼の気持ちも分かるがそういった言い方をされるとせっかくその気があっても、
気分を害してしまいすっかりチップをあげようという気もなくなってしまう。
とそんな風に少し説教じみたことを言うと彼は黙り、これから行く場所の話に話題は変わったが、
なんとなしにあと気味悪そうであった。

ディスコはワガドゥグと同じくオープンの野外ディスコといった感じだった。
平日のせいか人もまばらであり、彼らもバーとして利用しているような雰囲気であった。
彼もこの盛り下がった空気が気になったのか、

「先程はあんなことを言って申し訳なかった。」と意外と素直な人間であった。

彼も奥歯に詰まっていたものが取れてすっきりとしたのか、再び口が滑らかに動き始め、
我々のテーブルにはだんだんとビール瓶が並んでいた。

結局ディスコは盛り上がらぬままで、その日はちょっと飲みすぎてだるかったけれど、
彼の素直な一面も見れたし、それはそれでそれなりに楽しめた。

翌日私はアクラを発った。別にジョンと何かあったわけでもない。
それはこう言ったことから始まった。
昨夜床に入ると、私に角地のお勧めだという部屋を選んだのが裏目に出て、隣のカフェから
聞こえてくる大音響の音楽が騒々しくかなりの深夜にまで及んだ。それよりも、窓の隙間から入ってくる
風がやたらと冷たく、持っていたヤッケだけでは眠れない。これまでずっと寝苦しい夜を過ごして来たせいか、
体も通常であれば平気な温度にも耐えれないようになっていたようだ。その結果中途半端な睡眠となり、
部屋を変えてもらおうと思った。ところが予想外にもどうでもいいような部屋が空かないという事であった。
まあそれなら今日は他に泊まってまた戻って来てもいいかなという軽い気持ちで、近くの宿を朝の散歩
がてらのぞきに行ったのだが、意外なことにどれも結構な値段であった。
じゃあ、今日もう一日我慢するかと宿に戻る途中、暑さを感じたので空を見上げると快晴であった。

以外かもしれないが熱帯地域はスペインのコスタデルソルという地中海沿いの海岸のように、
晴れイコール快晴ではないのである。そしてその快晴の青い空に昨日の海岸沿いのトロピカルバーの
黄昏の光景と重なって、私をビーチに行きたいという衝動に追い立てたのだ。

エルミナではピラニアのようにチョコビスケットを突付く子供たちと一緒だったもののビーチにいたでは
ないかと言い聞かせたものの、トロピカル調のバーがあったわけでもないし、宿も少し離れていたじゃないかと
いうもう一人の自分の声が返ってきた。






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