Ghana 8

部屋に戻ると早速ガイドブックで調べたものの主だったところはアクラの西側、
つまりケープコーストなど,、私が足跡をつけてきた方向である。

また戻るのもどうかとかどうせならマイナーなところがいいなどと、
かなり贅沢な注文をつけて探していると、ちょうどトーゴへ向けての進行方向であり、
アクラから100Kmほど行ったところに、アダという小さな町があるのを発見すると、
その勢いで私は荷物を持ってバスターミナルに立っていた。

バスは途中で物売りが乗ってきて、実演販売を行ったり、
また宗教の布教活動があったりと言葉は分からなくても退屈凌ぎになる。

他のアフリカ諸国のように多言語国家なので時に英語も併用することがある。
特に面白かったのは頭のよくなるといった薬の熱演販売であった。

このようにバスは運がよければ楽しかったりするのだが、
出発時間が決まっているため、思いたつとすぐに行動を起こす私にはあまり便利ではなく、
通常は乗合バンを利用することが多い。

これだと定員になればすぐに出発するから。
ただ窮屈なことを除けば。アダに行くのにこの乗合バンを使った。
ガーナではこれをトロトロと呼ばれている。
いかにも亀のようにのそのそとスピードが遅そうだが、バスよりもずっと速い。

トロトロは長時間乗る場合は座る位置によって疲労度が違ってくるので。
座席選択が結構重要となる。

私がアダ行きのトロトロに乗り込んだときは、既に結構人が埋まっていて
扉のすぐ横(運転席のある最前列ではない)に座ることになった。
その場所はすぐ降りるには便利だが、車掌(少年)がいない時は扉の開け閉め係にもなる。

別に構わないのだが、そこは小さな補助席で、奥から乗客が座っているので
乗客の太り具合によっては、ほぼ補助席にお尻が半分ほどはみ出て
肩が窓を押えることによって、平衡をかろうじて保っている状態で、
車の揺れ等で結構ハードな座り心地になってしまうのである。

私が乗ったトロトロはガーナ第四の都会テマを経由するので車内がかなり混雑していて、
まさに私はその最悪の位置に座ることになった。
とは言え片尻座りでお尻が痛いことを除けば窓から風を受けれるので、
真中で暑苦しい思いをすることを考えると贅沢かもしれないが。

満席だったトロトロもテマを過ぎると、大半が降りる人で車内は快適になって来た。
乗客が3,4名になりがらんとした雰囲気になった時、ひなびた町に着いた。
そこが私の選んだアダであった。

あまりメジャーなビーチでないところから選んだが、あまりにも寂し過ぎるような第一印象だった。
空き地のようなターミナルでトロトロを降り、その辺の人にどこか安宿を知らないかと聞くと、
観光案内所があるからそこで聞けというではないか。

ということはやはりここは単なるひなびた町ではなくリゾート地なんだと、少し嬉しくなった。
案内所のお姉ちゃんはリゾートホテルっぽいパンフレットを見せてくれたが、
値段が馬鹿高いと言うと、バンガローがあり
未だ設備が完璧ではないがの断りがあったものの
こちらは安いと言うことなので、まずはそれを見に行くことにした。

ところがよほど観光客がこないのか宿のかぎを持っている人間が今ここに居なく、
探して鍵を取りに行って帰るのに一時間ほどかかるということだった。

まあ、別に急ぐこともないししばらくはパンプレット類を眺めていた。
アダの町はボルタ河の河口に位置していることもあり、リバーサイドクルーズというものを
売り物にしているようであった。

建物の中は涼しかったが体が冷えてきたので、外を散歩して町の子供たちと少し遊んだ後、
再び観光案内所に戻ったら二人の20代前半位の青年が私を待っていた。

サミーという割と背が高くスポーツ選手といった体格の青年ともう一人の彼の友達
(名前は忘れた)は、背は低いが勉強家のインテリ風と対照的な外見をしていた。

先ほどバンガローの設備は未だ整っていないとは聞いていたが、
実際見てみるとそれは想像を遥かに上回っていた。
ビーチに何件かのバンガローが並んでいて一つ一つが独立しているところまでは
リゾートっぽかったが、それ以外には何もない。

夏には野外ディスコのようなものもあるらしいが、シーズンオフのため廃墟と化していた。
バンガロー内部には電気はない、トイレとシャワーすらないというではないか。
内部の床は砂浜のままでただココナツで出来た屋根と囲いがあるだけという、
超質素なものでありとても女性は泊まれもものではなかった。

しかしシャワーは必要時にサミーに言えば水を用意してくれる、
夜間は彼が警備員のように空いているバンガローで泊まるので、
朝の洗面用の水も用意する、明かりはランプを持ってくるということだったので、
ちょっとしたサバイバル気分も悪くないかと、
他に安宿もなかったのでそこに落ち着くことにした。

ここ最近ほとんど人が泊まったことがないのか大きな隙間があったり、
天井から雨漏りしそうだったりといった物が多かったが、私意外には誰も居なく
その中から一番保存状況のよいものを選んで、荷物を降ろすとまずは一段落。

先ほど子供たちと結構走り回ったので早々シャワーを浴びたいというと、
バンガロー群の裏側にある、これまた廃墟のようなコンクリートの建物に
シャワーを浴びるような場所があったが、もちろん水は
サミーが持ってきてくれたバケツであった。

このバケツシャワーにはすっかり慣れっこになっていたが、
ボルタ河がちょうど海に注いでいる場所柄、かすかに塩分が含まれていた。
まあそれはそれなりに汗と泥が落とせてリラックスできたけどね。

体がすっきりしたところでサミーとその友達とその小さな町を探索に出かけた。
探索といってもメインストリートにあたる通り一本だけでほぼ全ての用が足りる
といった非常にシンプルな構造であった。

我々がのんびりと歩いているのとは対照的に一台の車がこの小さな町にそぐわない
猛スピードで追い越していった。それからほぼすぐガツンという大きな衝撃音が聞こえた。

止まった形跡は無く、人を轢いたようでもないし何かかなと思っていると、
やがて我々もそこに到達したときにはヤギが死んでいた。
頭から血が流れていてそれはなんとも生々しいものであった。
まったく可愛そうなヤギ。そんな横暴な運転をする彼らこそ、そうなるべきだったのに。
おかげでその日の夜は食欲もなくなり食事らしい食事をする気にはなれなかった。


トロトロでの移動で疲れたことも、少し呑みすぎたこともあり、
サバイバル・バンガローでの快適な眠りについた。


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