Ruissia 03
空腹なときに限って簡単にレストランが見つからない。
昨日現地情報としておすすめのところとして聞いていたから、諦めがつかない。
最後は人に聞くとそれはビルの中にあるという。
てっきり通りに面しているものだと思っていたし、看板らしきものも出ていないので、
本当に存在するのか少し不安になった。日本の高度成長期に建てられた団地のような建物の階段を、とりあえず言われた3階へと
上ったが、オフィスのような扉が二つあるだけで、ますます怪しかった。
そのうちの一つを空けると、そこは調理場になっているようで、汗だくになった女性が
出てきて、隣の扉を指差した。今度こそはとの思いでその扉を開けると、目元を真っ黒に塗った売春宿の元締めの
ような女性が私を迎えてくれ、ひょっとして怪しいところかもと、半信半疑で、
私がレストランかと聞くと、「ダー」(そうです。)と答えた。一歩中に足を踏み入れるとそこは、確かにレストランであった。
格調高そうな広い区間で、ビジネスマンのグループと一般客一組がすでに食事をしていた。
まずはメニューを見せてもらい、料金が列車の食堂車程度であることを確認すると、
今度は私が「ダー」といって、席に案内してもらった。まずは前菜にはスープを注文した。壷に入って出てきたので、冷え切った体を温めてくれた。
味もかなり良く、最初に怪しいと思ったお姉さんもサービスが良く、大瓶で出てきたビールを
テーブルに来る度に注いでくれた。メインは彼女おすすめのイルクツーク風のブタで、フライドポテトが添えてあった。
豚肉に片栗粉のようなものをまぶし、レーズンとサワークリームを二層に塗ってあり、
すごく美味しかった。肉も非常に柔らかかったため、脂身の嫌いな私でも、皿には何も残らない
ほどきれいに料理を平らげた。列車内で不足していた、ビタミンも十分に摂取でき満足だった。
これこそ隠れ家的なレストランだと思った。ただデザートはあまり特徴がなかった。
最後はチャイで締めくくり再び寒い外を歩き始めた。しばらく歩いていると、アイスクリームの屋台を見つけ、何を血迷ったのか、一つ買いそれを
食べながらホテルへの道を目指した。気温が低いため、アイスはなかなか溶けず、まるで宇宙食を
試しているような変な感じがした。宿に戻って絵葉書を書いていたら、22時前だというのアニメがやっていた。
???、この時間って普通子供の寝る時間だよな。でもどうして?そう思うと、私は手紙を書く
ことに集中できなくなってしばらく、その番組を見ていた。
謎は22時に解けた。画面にNHKのような時計が出てきて、針は17時を指し、5時のニュースが始まった。
そう、モスクワ時間で番組が放映されていたのだ。16時台だとちょうど子供の時間帯で納得したが、
同時になぜ子供番組なのに、地域ごとに時間をずらしてやる親切心がないのかと思った。しばらく番組を眺めていたら(言葉が分からないので)アメリカ映画を二人くらいの人が、
吹き替えをしたり、メキシコのメロドラマが放映されていたりと、結構バラエティーに富んでいるようだった。
☆
昨日の朝食時には大好きなハンバーグが登場し、期待して朝食の食堂へと向かった。今朝は白パンとチーズ二切れからはじまり、目玉焼きとソーセージ、チョコのコーティングされた菓子パンと
コーヒーが出てきた。茶位より少なくとも数倍値の張るコーヒーを出すなんて、なかなかやるなと
一人感心していた。アンガラ河の散歩も兼ねて駅まで歩いていくことにしたが、今朝は一段と冷え込んでいた。
凍結した河の上を歩いていると、凍結していない部分から濃いブルーに水から湯気のようなものが、
立ち込めていた。そして並木道の通りでは、凍った粒のようなものが-ダイヤモンドダストというのか-
が舞っていた。最初は銀世界、氷に包まれた神秘的な世界と喜んで歩いていたが、途中から風が強くなり、
とても散歩を楽しめる状態ではなく、駅に到着したとき私の体は心底冷え切っていて、風邪を引いたみたい
だと分かるほどだった。
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