Turkey4


観光案内所でもらったトルコの精密な地図を眺めていたらそろそろトルコ最後の町ドウバヤジットだった。
石油タンクのトラックが町の手前から数多く止まっているのが目に付いた。ナンバープレートも見慣れた数字でなく,
イランからのものでイランがもうすぐそばにあることがうかがえる。

 もう乾燥地にいることがはっきりと分かるぐらい街はホコリぽかった。一歩裏通りをあるこうなら舗装もされていなく
砂埃で目が痛くなるほどだった。国境の町は治安が悪かったり人が良くないことがなぜか多い。ここで言えば,
子供たちが金だの物だのをくれとぜんぜん可愛くない。中にはずっと我々の跡を付いてくる質の悪いのもいた。

 市場に入りマサはバナナを見つけバナナの値段交渉を始めた。私はちょうど話し掛けてきた奴との会話を楽しんでいた。
最初はここはクルド人の国で学校でこそトルコ語を習うが家ではトルコ語を話しているとなど興味深いことを言っていたが、
彼になかなか英語がうまいじゃないかと誉めてやるとちょっと照れくさそうな顔をしてから誇らしげにこう言った。
「この町には英語を話せる人間は27人しかいないんだ。私はその一人なんだ。」と。えっと、一瞬笑いかけたが,
彼が真顔で言っているのでこらえたがいったいどこから27人という数字が出たのか。あまり突っ込むと悪いと思い
聞かなかった。

 その彼と別れてアララット山を近くで見たいと思い観光案内所に行くまでの1時間と途中の道、案内所ですでに
4人も出会った。さっきの彼と宿の兄ちゃんこれで6人。27分の6、二日間で22パーセント。これは人口
23万人の
町ではすごい確率だった。




                                  ☆

 ここはノアの箱船の降り立ったアララット山がきれいに眺められる町でそれだけのためでも、ボーとする価値の
あるところだった。ドウバヤジットに着く手前から気になっていて頂に雪をかぶった山を見たときに一瞬そうかなと思ったが、
地図にはアール山と書いてあったし、いくら町の標高が
1000メートル以上あるといっても5165メートルもある山にしては、
富士山よりも低く見えたのでイマイチ確信できなかった。

 夕日に映えてきれいな姿をしていた。町の人にあの山の名前は何ですかと尋ねると「アール山」と返って来るし。
あれは「アララット山」ですかと聞くとあっさりそうだと返ってきて私は困惑した。

 つまりそれはこういうことだった。世界的に知られているアララット山というのは、隣の国アルメニア人にとっての聖地であり、
その名もアルメニア語である。ところが元々アルメリア領だったこの土地が、トルコのものになって現在に至っているために
トルコ語のアール山と言った別の名前が付いているのでややこしかったのだ。それよりもさっきも言ったように、
周りに何もなくポツと聳えているのでいくら頂に雪があるといっても
5000メートルもないと思い込んでいたのが良くなかった。

 我々はぜひこの聖なる山に行ってみたかった。もし出来ればトレッキングで。ところがまずトレッキングとあっても
よさそうな案は簡単にボツになった。山は軍の管轄なのでだめということだった。では、どこか眺めの良いところに
行きたいと聞くが、どうやらこの辺から眺めているのとそれほど変わりそうになかったので市場の前から記念撮影をするにとどめた。

 私はこの町の見所はアール山だけだと思っていたが、ふと絵葉書を買いに入った店で一枚の写真を見つけた。
イシャックパシャという要塞であった。町の外れ5キロのところにあるということだったが、小高い山の上にあるということなので、
値切れるだけ値切って車をチャーターして行った。正解である。まるで峠越えをするかのように町の様子がだんだんと下に
小さく見えて来た。

 しばらくするとヨルダンのペトラで見たような岩をそのまま削って造ったような大きな建物が目の前に現れた。



 中に入ると岩をそのまま削ってはいないが、土色のその巨大な建造物はきれいな形で保存されていた。
そこにはもちろんハーレムの間もあった。中はちょっとした迷路のようで楽しかった。そのほかにも書きたいことがあるのだが、
なぜか何も思い出せない。あれだけインパクトが強かったのに。ただ一つ言えるのは、素晴らしかったということである。





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