Togo 1


このまま海にいると日焼けがますますひどくなりそうだったので、
今朝はトーゴに移動することにした。

出発まで時間があり絵葉書を書いてから、サミーに郵便局に付き合ってもらい、
彼と村の小学校を 訪れたが、休日だったせいかひっそりとしていた。
誰もいない教室を二人で眺めながら、小学校にすら通えない子供達が沢山いて、
国がなかなか発達しないといった話をしたりして、時間をつぶした。

またいつものようにトロトロに乗り、私はアダの村を後にした。
さて、次の目的地、コードのことでも調べることにしようか。

地図でみるとトーゴとの国境は一時間強でいける距離だが、
ぐるっと周辺の町を回るため、思ったよりも時間がかかっていた。
さらに途中で乗ったトロトロが故障したため、別のに乗り換えさせられ、
時間がかかり国境の町アフォに着いたのは1時を過ぎていた。

国境の町らしく活気があった。
私が国境はどっちだと聞いたら横から子供が入ってきて、
「私が国境超を手伝ってやるから、チップをくれ。任せておきな。」
その必要はないと断り、残ったセディを清算するためあるレストランに入った。
レストランの裏側はビーチになっていてアダよりもずっときれいで、
整備が行き届いてしかも波が少ない。

ここでもよかったかもしれないが、この町の匂いはアダのような新鮮な空気はなく、
胡散臭くくすんだものしか感じられなかった。
実際、さっきの少年もしつこく中まで付いて来る。

メニューにあっても実際に無い物が多いので、何が食べれるかと聞くと、
ジョロフライス(炊き込みごはん)でチキンライスにも似た
親しみを感じる食べ物だった。
ちなみにジョロフはセネガルに存在したウォロフ族の王国の事。

ガーナ最後の食事を終え、外に出るとまた例の少年が付いてきた。
おまえは昔いたモロッコの自称ガイドかと言いたくなるほどしつこかった。
コンサートホールに行くように人々は、ぞろぞろと国境に向かっていた。
同じ国境なのにこれほど差があるのかというほど憲兵の質が悪かった。
私が出国を終えトーゴ側に向かっていると、ガーナ出国手前で
おさらばだと思っていた少年が私を待っていた。
聞くと彼らはトーゴにはフリーパスでいけるという。

実際目をやると県境を越えるような感覚で、みんなスイスイと簡単に国境超えをしていた。
トーゴ側は空港の税関を出た所のように、ガーナからやって来る者を待ち構えている奴もいた。
それにしても目付きが悪い。
それが私のトーゴ最初の町でかつ首都であるロメの第一印象っだった。

私が辺りを見回していると例の少年がこのタクシーに乗れとしきりに私に行っていた。
そのまま無視して国境から少し離れたところで、アネホというのんびりした湖畔の町に向かう、
乗合タクシーターミナル行きのタクシーに乗るつもりだった。

するとビーチの陰からこれまた目つきの大変悪い3〜4人が、
こっちに来いと手招きしながら私の方に向かってきた。
その時、昔にリマで危ない目にあった時の光景が甦り、瞬時に逃げようとした時、
さっき少年が乗れといっていたタクシーが私の横に止まり、
「すぐに乗れ。」と叫んだ。

少年が自分のコミッション込みの料金を主張するが、
タクシーの運ちゃんも彼が迷惑なのか手で振り払いながら料金を振ってきた。
咄嗟の危険を感じ車に乗り込むと、アラブ人のようなあごひげを生やした50代の彼は、
一言、「危なかったな。俺があの時おまえを拾っていなけりゃ、
今ごろあの悪党どもに身包みを剥がされていたぞ。
通常だったら恩を着せておいて、後で追加請求など何か魂胆があるなと思うのだが、
なぜか彼の言葉にはそういったセコイ物が感じられない。

単に頼りなそうな観光客を救ってやったという程度にしか聞こえなかった。
実は彼は強盗の被害に遭ったことがあるということだった。

カーラジオが通常置かれている場所を指差しながら、
「昔はここにラジオがあったんだがな。今はない。
おまえを狙おうとしたような奴等に盗られたのさ。本当にこの国の治安は最低だよ。」

右手にきれいなビーチ、左手にシェラトンを始め大きなホテルが、いかにもリゾート地
といった光景の中を進んでいるのだが何か物足りなかった。そう、それは活気だった。
全くと言ってもいいほどに観光客の姿が美しいビーチにはなかったのである。

時々見かけるのは地元の若い連中達だが、彼らの様子もおかしい。
数人のグループでたむろして薬みたいのをやっている奴等の姿も見た。
どうも目つきの悪い奴の姿がやたらと目に付く。
私は当初トーゴではビーチでのんびりとしようと考えていた。
と言うのもずーと昔に友人がそこを旅行した際、あまりにも美しく平和だったので、
翌年に彼女を連れて行ったというくらいのところだったからである。
が、実際変わってなかったのはきれいなビーチだけだった。
ホテルからは廃虚のような香りも漂ってきた。

運ちゃんにロメの街を散歩しても大丈夫かねと聞くと、当たり前のようにとんでもない、
おまえは未だ懲りない気かと言わんばかりに答えたので、車から街の中心を見学しながら
ターミナルへと向かった。確かに平和な雰囲気はなくなっている。

それでも、アネホのような田舎町ならのんびりと出来るだろうと、
彼に同意を求めるつもりで聞くと、意外なことにNonという答えが帰ってきた。
しばらく別のことを話していたが、私の言ったことが上手く伝わらなかったのかもと
もう一度聞くと、かったるそうに「さっきも危ないと言ったじゃないか。」
でも、アネホって田舎だよなと私が突っ込むと、もう疲れる奴だなと行った風に
私の顔を見て言った。

「俺は、アネホを良く知っている。そこの出身なんでな。」
私は普段真面目で温厚だった人がある日突然に殺人事件を起こし、
「まさか、あの人がやったなんて信じられない。」と語るような驚きで、
あのアネホがとショックを受けてしまった。

さらに彼は私のショックに追い討ちをかけるように一言付け加えた。
「悪いことは言わんからそのままベニンに抜けろ。」
えっ、と一瞬何でと思ったがあまりの迫力に、彼の案も考えてしまった。

それでも、乗合タクシーのターミナルに着いた私は、
まだアネホに行くことを諦めてはいなかった。
しかし、ベニンに行く乗客達にも尋ねたところやはり彼と同じ意見だった。

そんなわけで私はアネホまででなくコトヌーまでの切符代を払った。


            
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